NFTを調べる上で、独自コントラクトという言葉を目にしたことがあるかもしれません。
OpenSeaの機能を使って、ただNFT作品を作ってみるだけなら知らなくてもよい言葉です。
しかし、本気でNFTプロジェクトに取り組みたいと考えているなら知らないと後悔するかもしれません。
そこで、独自コントラクトについて「聞いたことはあるけど何だかわからない」「独自コントラクトを持ちたいけどエンジニアじゃないから無理」と考えている方に向けて、独自コントラクトとは何か、そしてプログラミングの知識がなくても簡単に独自コントラクトを作成できる方法についてご紹介いたします。
この記事を読んでいただければ、独自コントラクトについて理解でき、よりあなたに合ったNFTプロジェクトを作ることが出来ます。
この記事でわかること
- 独自コントラクトの意味
- 独自コントラクトを持つメリット
- 独自コントラクトを作成できるwebサービス
独自コントラクトとは自分が作ったスマートコントラクトのこと
独自コントラクトとは、文字通り自分が作った、あるいは自分が作成者となっているスマートコントラクトのことを指します。
逆に作成者が自分ではなく、誰か（主にプラットフォーム）が作った1つのコントラクトをみんなで使っている場合は共有コントラクトです。例えばOpenSeaでNFTコレクションを作った場合、共有コントラクトを利用することになります。
スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で契約や取引が自動的に実行される仕組みのこと。ある条件が満たされたときに、プログラムによって特定の処理が行われます。
NFTを発行するには、ブロックチェーン上にスマートコントラクトをデプロイ（配置）する必要があります。
独自コントラクトか共有コントラクトかを見分ける方法
NFTプロジェクトのコントラクトが独自コントラクトかどうかは、Etherscanなどのブロックチェーンエクスプローラーで調べることが出来ます。
まずOpenSeaにアクセスして、調べたいNFTコレクションを検索、コレクション内のNFTをクリックします。
NFTの詳細ページから作品画像の下にある「詳細」の右横矢印をクリックします。（下図①）
詳細データが表示されるのでコントラクトアドレスをクリックします。（下図②）
するとEtherscanのページに飛ぶことが出来ます。
下図は有名NFTコレクションBoredApeYachtClub（BAYC）を調べたときのEtherscanの画面です。
コントラクトの作成者（Contract Creator）がプロジェクトの名前になっています。
つまり、BAYCは独自のコントラクトを用いていることがわかります。
下図は共有コントラクトを用いているコレクションを調べたときのEtherscanの画面です。
コントラクトの作成者（Contract Creator）がOpenSeaになっています。
独自コントラクトのメリットデメリット
独自コントラクトにはメリットとデメリットがあります。
以下、それぞれについて解説していきます。
メリット１ 自分のコレクション名が残る
独自コントラクトである場合、コントラクトの作成者は自分であり、自分でつけたコントラクトの名前（多くの場合コレクション名）がブロックチェーン上に残ります。
そして各NFTの発行元もそのコレクションを作った自分ということになります。
しかし、共用コントラクトの場合は、コントラクトの作成者およびNFTの発行元が、記録の上ではOpenSeaなどの別の誰かになってしまいます。（共用コントラクトを作ったのが自分であれば話は別ですが……）
メリット２ 技術次第でカスタマイズ可能
自分でコントラクトを作成する場合、コントラクトに独自の機能を持たせることが出来ます。アイデア次第で、誰も見たことのないＮＦＴプロジェクトを作ることが出来るかもしれません。
しかし、これにはプログラミングの知識、技術が必要になります。
メリット３ コレクションやNFTを見つけやすい
独自コントラクトであれば、基本的にコントラクトに紐づいているのは、自分のコレクション内のNFTだけなので、イーサスキャンなどのDApps上で自分のコレクションやNFTを見つけやすくなります。
例えば、イーサスキャンで取引を確認する場合、コントラクトアドレスを入力すれば、自分のコレクションのNFTだけが表示されます。しかし、共有コントラクトであれば、自分以外の制作者のものも表示されてしまいます。
上図はEtherscanの画面です。共有コントラクトの場合、共有コントラクトを利用している全てのコレクションの膨大な履歴が反映されるので、特定のコレクションの履歴がどこにあるのかわかりません。
そのため仮にOpenSeaがなくなって、OpenSeaのサイトで履歴を検索できなくなってしまった場合、自分のコレクションの履歴を追うのが難しくなってしまいます。
上図はBAYCのトランザクションを調べた結果です。BAYCは独自コントラクトでNFTを発行しているので、ブロックチェーン上にBAYCのコレクション名（コントラクト名）が刻まれています。そのためBAYCの履歴だけを抽出して表示できました。
デメリット１ デプロイにガス代がかかる
コントラクトをブロックチェーン上に移して使えるようにするためには、ガス代がかかります。
独自コントラクトを作成するのであれば、このガス代を支払う必要があります。
※ガス代がどれくらいになるかは、チェーンの種類やトランザクションの込み具合、コントラクトの作られ方によります。
私がイーサリアムチェーンのコントラクトを作成した時は、数千円でデプロイできました。
デメリット２ コントラクトに不備があった場合は自己責任
自分でコントラクトを作成した場合、責任は自分で負わなければなりません。
コントラクトをいったんブロックチェーン上にデプロイしてしまえば、改変することはできませんので、慎重に行う必要があります。
独自コントラクトの作り方
独自コントラクトを手に入れる方法は２種類あります。
- 自分でプログラミングする
- webサービスを使う
コントラクトにオリジナルの機能を実装したい場合であれば、エンジニアを雇うかもしくは自分自らプログラミングして、コントラクトを作り上げる必要があります。
しかし、ただ自分だけのコントラクトが欲しいという場合であれば、webサービスを利用してノーコード（プログラミング不要）で簡単に独自コントラクトを作成できます。
独自コントラクトを作成できるサービス
独自コントラクトを作成できるサービスはいくつもあります。その中でも個人的におすすめのサービスをいくつかご紹介します。どれもＵＩが洗練されていて使いやすく、ロイヤリティの設定も可能です。
Rarible
Raribleは2019年11月に立ち上げられたNFTマーケットプレイスです。
多機能で洗練されたUIが使い易く、海外での知名度は高いです。
RARIというガバナンストークンを発行してユーザーに配布しており、保有者が運営にかかわることが出来るなど、コミュニティを重視した運営をしています。
- 知名度の高いマーケットプレイス
- 複数のブロックチェーンに対応
- Lazy minting機能が使える
- 独自コントラクトと共有コントラクトどちらかを選ぶことが出来る
Foundation
2020年5月に立ち上げられたNFTマーケットプレイスです。
以前は招待制のマーケットプレイスで、選ばれた人しか出品できませんでした。
そのため、質の高いNFTが集まっているとして人気の高いマーケットでした。
現在は招待制を廃止しており、誰でも出品できるようになっています。
- 知名度の高いマーケットプレイス
- NFTを作る際の詳細なマニュアルが用意されていて、迷うことがない
- Split NFTを作れる（収益を最大4人で分けることが出来るNFT。各参加者のシェア率を設定可能）
- 大規模プロジェクト用のプランがある
third web
Third webはweb3の開発に役立つツールを提供しているサービスです。
スマートコントラクトの作成やSDKの提供などを行っていて、web3で動くアプリの開発に役立つ機能を用意してくれています。
- Lazy minting機能が使える
- 複数のブロックチェーンに対応
- 開発者が使い易い機能とＵＩ
結局どのwebサービスがいいの？？
それぞれのサービスに特徴があるので一概には言えませんが、私はRaribleで独自コントラクトを作成して、コレクション運営をしています。
理由は、Lazy minting機能と知名度の高いマーケットプレイスがあるからです。
Lazy mintingとは、売買成立などによってNFTの所有権が移動するときにmintされる方式です。この場合、mint時に必要なガス代を購入者が支払うことになるため、制作コストを気にせずNFTを作ることが出来ます。
しかし、購入が成立してmintされるまではブロックチェーン上にきちんとデータが刻まれていないため、NFTがDAppsに反映されません。そこで、まずmintサイトを作ってNFTを販売する必要があります。
ただ、OpenSeaやRaribleのようにマーケットプレイスがある場合は、それらのサイトがmintサイトの役割を果たしてくれます。
したがって、最も費用をかけず、しかも簡単に独自コントラクトのNFTを制作販売するにはRaribleが最適だと判断しました。
※RaribleのLazy minting機能が使えるのはガス代が高いイーサリアムでNFTを作る時のみです。（2022年11月時点）
まとめ
今回は独自コントラクトについて以下の内容をお伝えしてきました。
- 独自コントラクトとは自分が作成者のスマートコントラクトである
- スマートコントラクトを自作すれば、コントラクトを所有してコントロールできる反面、ガス代を支払わなければならない。また不備があった場合は自己責任
- 独自コントラクトを簡単につくれるwebサービスがある
独自コントラクトを持つということは、OpenSeaなどのプラットフォームに依存する度合いが低いということです。
Web3は「非中央集権を実現する」という文脈でロマンを感じている方が一定数おり、そういった方々にアピールできるところもポイントです。
また非常に有名なNFTプロジェクトであるCryptoPunksやBAYCも独自コントラクトでNFTを発行しています。
これらのことからも、独自コントラクトを持つことは自分のNFTプロジェクトのブランディングを考える上で意味があります。
この機会に独自コントラクトの作成について検討してみてください。
